音楽の窓 Vol.3

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2021年7月21日(水)

最近JR等の鉄道の窓が空いていることはご存知ですか?

コロナ対策の換気のため、窓を少し開けて密閉空間にならないようにしているんだそう

走行中は涼しい風が入ってくるので暑い夏にはよりピッタリです!

少しの努力を重ねることで感染の抑止に繋がればいいですよね!

それはそうと、僕が電車に乗ったあの日は梅雨の真っ只中で……

お察しの通り、背中が冷たくなりました……

みなさんも雨の日に電車に乗る際はお気をつけください……

こんにちは!

kioi tv編集者 五月晴です!

さて、始まりました毎週連載音楽の窓

ここでは皆さんに音楽の新たな一面をお見せする記事を連載しています

是非ぜひ毎週チェックしてみてください!

前回紹介させていただいたのは

Mrs.GREENAPPLE 青と夏

曲名からページに飛べますので、こちらもどうぞ!

今週のテーマは

「夏の夜にピッタリなホラーな一曲」

今回紹介するのは……

カンザキイオリ あの夏が飽和する

そもそもカンザキイオリとは一体?という方のために……

カンザキイオリとは2014年から活動するボーカロイドプロデューサーです

当初黒柿名義でone dayを投稿し、ボカロPとしてデビュー

15年にカンザキイオリに改名したのち、

17年8月に命に嫌われているを発表しました

この楽曲は自身初の殿堂入りを果たしており、

まふまふを始めとする多くのアーティストにカバーされ、彼を代表する一曲となっています

彼の描く音楽は小説家としての一面からくるものか、

聞くだけで情景が頭に浮かびだすような、心を揺さぶる歌詞が多く存在します

そんな楽曲たちには物語性があり、彼自身が著した小説とリンクしていることもあります

そんなカンザキイオリあの夏が飽和する

のちにご本人が同じ題名で本を出版されているこの楽曲は

頭に焼き付いて離れない夏の思い出が鮮明に描かれています

それではこの楽曲の歌詞について深掘りしていきましょう!

「昨日人を殺したんだ」

君はそう言っていた

梅雨時ずぶ濡れのまんま、部屋の前で泣いていた。

夏が始まったばかりというのに、君はひどく震えていた。

そんな話で始まる、あの夏の日の記憶だ。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

梅雨時の雨が降りしきる中、傘を差すことも忘れて僕の家までやってきた君

それ程までに人を殺した恐怖や罪悪感に苛まれて憔悴していて

暑さがどんどん増していく夏なのに、君は真冬のように震えていました

これから語られるのは君の突然の告白から始まった

僕の心に鮮明に焼き付いた、あの夏の日の思い出です

「殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるアイツ。

もう嫌になって肩を突き飛ばして、打ち所が悪かったんだ。

もうここには居られないと思うし、どっか遠いとこで死んでくるよ。」

そんな君に僕は言った

「それじゃ僕も連れてって」

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

君が殺してしまったのはいつも虐めてくる嫌なアイツ

正直いなくなって済々するくらい

君が犯した罪なんて何にも思わなくて

そんなことよりも思い詰めた君がいなくなることの方が嫌で

君の逃避行について行くことにしました

財布を持って、ナイフを持って、携帯ゲームもカバンに詰めて、

いらないものは全部、壊していこう。

あの写真も、あの日記も、今となっちゃもういらないさ。

人殺しとダメ人間の君と僕の旅だ。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

咄嗟に目に付くものだけ掴んで 僕たちのいた痕跡は消して

今までの思い出なんてもうどうでもよくて

罪を犯した君と、何も残せていない僕

たった2人だけの逃避行に胸が沸いていました

そして僕らは逃げ出した。 この狭い狭いこの世界から。

家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で。

遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。

もうこの世界に価値などないよ。 人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか

君は何も悪くないよ。 君は何も悪くないよ。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

学校や家族なんて狭いコミュニティから逃げ出した僕ら

いじめられてたって誰も助けてはくれない

人殺しにも等しいやつらが溢れてる世界に未練なんてなくて

君は何も悪くなんてない

僕だけは君の味方で居続けると決めました

結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ。

そんな嫌な共通点で僕らは簡単に信じあってきた。

君の手を握った時、微かな震えも既に無くなっていて、

誰にも縛られないで二人、線路の上を歩いた。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

誰にも愛されず、味方なんていなかった僕ら

愛に飢えていたからこそ僕らは傷を舐め合うかのように信じ合っていました

君がそばにいれば大丈夫

僕らの進む先にはなんのしがらみもない、2本の長い線が続いていました 

金を盗んで、二人で逃げて、どこにも行ける気がしたんだ。

今更怖いものは僕らにはなかったんだ。

額の汗も、落ちたメガネも、

「今となっちゃどうでもいいさ。 あぶれ者の小さな逃避行の旅だ。」

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

強盗なんかで怯えることもなくなって

僕は君とならなんでもできるような気がしていました

その日その日を懸命に生き抜くだけで精一杯で

それでもそんな日々に充足していました

いつか夢見た優しくて、誰にも好かれる主人公なら、

汚くなった僕たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな?

「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見ろよ。

シアワセの四文字なんてなかった、今までの人生で思い知ったじゃないか。

自分は何も悪くねえと誰もがきっと思ってる。」

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

今でもふと思い描く”IF”の未来

そんな希望を夢見る僕とは対照的で

君は今までの現実から期待なんて持つことはありません

ですがそれは、人を殺めた自分すら「自分は悪くない」と思ったからこそ気付いたのです

あてもなく彷徨う蝉の群れに、水も無くなり揺れ出す視界に、

迫り狂う鬼たちの怒号に、バカみたいにはしゃぎあい

ふと君はナイフを取った。

「君が今まで傍にいたからここまでこれたんだ。

だからもういいよ。 もういいよ」

「死ぬのは私一人でいいよ」

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

僕らの逃避行はあてもなく彷徨うばかりで

蝉の声が耳をつんざく夏の暑に体は限界を迎えていて

すぐそこまで迫る追手から逃げては追われを繰り返す日々の中

君はたった1人で、僕を置いて死ぬことを選びました

僕がいたからここまで生きていられたんだ

だからこそ、僕に死んでほしくないんだ

そして君は首を切った。 まるで何かの映画のワンシーンだ。

白昼夢を見ている気がした。 気づけば僕は捕まって。

君がどこにも見つからなくって。

君だけがどこにもいなくって。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

白い首から迸る赤い液体のコントラストは

まるで夢でも見ているかのようなほどに非現実的で

その瞬間時が止まったかのように感じました

ふと気がつくと僕は追手に捕まっていて 共に逃げたはずの君はどこにもいませんでした

そして時は過ぎていった。 ただ暑い暑い日が過ぎてった。

家族もクラスの奴らもいるのになぜか君だけはどこにもいない。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

蝉の声も追手の声も君の声も聞こえない

ただ無為に時間だけが過ぎて行く暑い夏の日々

捨てたはずのものだけが残って 選び取ったはずの君はどこにも見つかりません

あの夏の日を思い出す。 僕は今も今でも歌ってる。

君をずっと探しているんだ。 君に言いたいことがあるんだ。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

あの日々は僕の中に鮮明に残っていて

突然僕の前から消えた君をふと暑い夏の雑踏に探してしまう

それは君に伝えそびれた言葉があったからこそ

九月の終わりにくしゃみして 六月の匂いを繰り返す。

君の笑顔は 君の無邪気さは

頭の中を飽和している。

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

九月の涼しい風にふとくしゃみをして あの夏の初めの震えていた君を思い出す

逃避行の中の笑顔で無邪気な君は僕が僕の頭の中を埋め尽くして

君への想いは今にも決壊寸前で

誰も何も悪くないよ。 君は何も悪くはないから

もういいよ。 投げ出してしまおう。

そう言って欲しかったのだろう?

なあ?

出典: あの夏が飽和する/作詞•作曲:カンザキイオリ

後になって思います

あの日の君は助けを求めていた訳じゃなくて

ともに全てを投げ出せる共犯者ともいうべき存在が欲しかったのだと

それを答えてくれる存在は僕の心の中にいます

いかがでしたか?

いじめや誹謗中傷が蔓延る、辛さに満ちた世の中で

希望すら持てず全てを投げ捨てた僕と君

僕らの逃避行の中で君は欲しかったものを手に入れられたのだろうか

カンザキイオリの描く歌詞は様々な感情を想起させます

捨てることでしか手に入れられないもの

手に入れたとしてもいつか消えてしまうもの

皆さんの本当に大事なものはなんですか?

今回の連載はここまでになります!

次回は

ちょっと趣旨を変えた新たなテーマでお届けしますのでお楽しみに!

ではでは!

五月晴
(さつきばれ)
城西大学メディア学部所属 kioi tv編集者
梅雨の京都に生まれた理系大学生
広く深くをモットーに邦楽全般をこよなく愛している
好きなアーティストは[ALEXANDROS]、櫻坂46など
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